Uno,Dos,Tres

スペインでサッカー指導者として活動する坪井健太郎のBlog

沼津中央高校クリニック

こんにちは。

7月29日から8月1日にかけて静岡県沼津市にある高校、沼津中央高校のクリニックを行いました。

この高校のクリニックは2009年から毎年行っていて今年で4回目。

高校時代の同級生が監督をしていてその縁もあり今年もお世話になりました。

実は僕がこのように夏に日本に帰ってきてクリニックをしているの初めてのチームがこの沼津中央高校なのです。

毎年、成長した選手たちの姿に出会えるのでとても楽しみにしています。

今年はチームの状態を見て「守備的なゲーム運びからのカウンターでゴールを狙う」というテーマでクリニックを行いました。

 


そして3日間のトレーニングの後、最後の日には沼津西高校とトレーニングマッチを行いました。

若干のメンバー変更と、システムの変更をして戦術トレーニングを行いゲームに備えます。

主なテーマはプレッシングからのカウンターです。

日本に帰ってきて様々なレベルの試合を見ています。Jリーグ、プリンスリーグ、小学生の試合などを見ていますが守備のプレッシングがきちんとオーガナイズされているチームに出会うのはなかなか難しいのが現状です。

残念ながらJのチームでもしっかりとそれを実践しているチームは見れていません。

典型的なのはスペイン語で”Llega Tarde"と表現することができる「遅れてアプローチに行く行為」です。

ボールホルダーに対する一人目のアクションに対して2人目や3人目が連動しておらず、パスを受けるときに遅れてアプローチに入ってしまう現象です。

これが起きてしまうと、簡単にターンをされて壁パスやレガテでプレスをかいくぐられ組織はほころんできます。


抜かれてもいいから取りに行く

そこで、今回のクリニックでプレッシングを浸透させるにあたってスタートラインに立つためにまずアドバイスをしたことは、自分たちが奪いたいと決めたところにパスが行ったら「抜かれてもいいから行く」というアグレッシブな姿勢。

効果的なプレッシングをかけるためには、一定のゾーンにボールを誘導したらリスクを負って取りにいくことが必要となります。

しかし、日本人はその守備の際に必要なインテンシティやアグレッシブさがどうしてもかけています。

抜かれてしまうことを恐れているのでしょうが、ボールを見てしまう傾向があります。

スペイン人と比べると決定的に勇気が足りないのではないかという風に見えてしまうくらいです。

そこで、アドバイスとしては「抜かれててもいいから取りに行く」ということ、そして選手に勇気を持ってボールを取りに行ってもらうために、背後のカバーリングを徹底しました。

これによって失敗を重ねながら徐々に選手たちは迫力のあるプレッシングをパフォーマンスに出してくれるようになりました。

ここでのキーファクターは「予測」と「インターセプト」、そしてアグレッシブな姿勢です。

 

 

 

 


2日目…対応策の確認

 

2日目のトレーニングではそのプレッシングが効果的に機能し始めたときに相手がとってくるであろう攻撃のパターンとして「背後へのロングボール」への対応を確認。

サイドバックの背後へはセンターバックがカバーに入り、真ん中のスペースはボランチが埋めるという守備組織のバランスのとり方を確認しました。

ここでの重要事項はDFラインとボランチの連携となります。ライン間が分離してしまうとバランスを取るための穴埋めのために走る距離が長くなってしまいます。

そしてもう一つは守備のセットプレーの確認。

どうしても失点が多かった守備のセットプレーを修正します。



3日目…準備のトレーニング

試合前日となったこの日は2vs2、攻撃のパターン練習、ゲームとセットプレーの攻撃を確認して終了。

2vs2では、前から数的同数でプレスをかけて取りにいくことと、2人の関係でのコンビネーションの構築。

攻撃のパターン練習では、中盤やサイドで奪ったあとにトップにくさびを入れてからのコンビネーションや、サイドのMFに一回パスをしてからの崩しのパターンからのフィニッシュ。

なかなかシュートが入らないのもこのチームの特徴でした(笑)
(実際の試合でもビッグチャンスを何度も外していました)

ゲームはダブルボックスでの5vs5+5人のフリーマンが外にポジションをとっている形式。

シュートを打てる回数を増やしハイテンポでのゲームを行いました。

これはスペインでも試合前の日によくやるゲーム形式で、コンペティション(戦い)のリズムを体に入れる目的で行われます。



最終日…沼津西とのTM

クリニックの締めは試合。

初めのミーティングでは2つのことを伝えました。

 

1つは、「試合に対するactitud(姿勢)」です。

サッカー選手が一番うまくなるのはトレーニングではなく試合です。

その一番大事な舞台に立つにあたってのサッカー選手としての心構えを持ってゲームに臨むこと、試合中に起こる問題に最後まで真向から立ち向かって解決しようとすることの重要性を伝えました。

そしてもう一つは3日間行った戦術のおさらいです。

 

結果から言うと試合は0-2で負けてしまいました。

しかし、選手たちのパフォーマンスは非常に集中力、インテンシティともに高く良い内容だったと思います。

些細なミスからの失点でとても悔やまれる試合でしたが、プランニングしていたセットプレーからチャンスも作りましたし、プレッシングからのボール奪取から決定的チャンスも何度か作りだすことが出来ました。

一番の手ごたえは選手が掴んでいるのではないでしょうか。

負け方にしても「コテンパンにやられた」というのと「可能性を見いだせる負け方」という2種類がありますが、この試合は明らかに後者だったはずです。

それだけ選手は最後まで可能性を信じて戦ってくれていましたので僕は非常に嬉しく思います。

また、陰で支えてくれているマネージャーやコーチのみなさん、選手の父兄の方々のみなさんにはお礼を申し上げたいと思います。

4日間ありがとうございました。

また、次回お会いできるのを楽しみしています。

そして、選手権に向けてがんばれ沼津中央高校!